●牛肉の色 牛肉の色は鮮紅色が標準的な色ですが、良いものは艶のある鮮紅色になります。これから述べる様々な条件によっても多少の色の変化が見られます。
(1)年齢、性別、品種別
若齢のものは淡い紅色で、老齢のものは筋肉色素の沈着が進み濃い赤みを帯びています。子牛の肉は、極めて淡いピンク色をしています。ほとんど筋肉色素が沈着していない、むしろ白色に近い肉色のものが良質とされています。
若齢肥育の乳用牛は、和牛に比べやや淡い肉色です。また、同じ月齢のものの比較は、雌牛は去勢牛よりやや濃い肉色をしています。
(2)部位別による色の差
よく運動する部位のネック、すね、かた、ばら、そとももなどは、肉のきめは粗く、総体的に濃い肉色をしています。
(3)体調によるもの
と畜までの牛の管理状態で、微妙な肉色の変化が見られます。長時間のトラック輸送、多頭数を係留して起こるストレスなどはと畜後の肉色の赤みを強くし、精肉処理の段階でも良い発色作用が起きません。また、持続性がなく、早い時間で暗赤色へと変化します。
(4)熟成によるもの
牛肉の良い風味と軟らかさを出すために、適正な温度管理(摂氏0〜2度)の下でと畜後一週間程度の熟成が必要です。
と畜後の新しい牛肉は、鮮やかな色はしていますが、見た目ほどうまさがありません。適正に熟成された牛肉は、赤みがやや沈んだ色となり、また、熟成が進みすぎると発色作用は短時間に終息してしまいます。
(5)発色作用について
牛肉を部分肉から精肉にする過程で、肉の断面の色合いに次のような変化が起こります。
カットされた表面は、処理後30分位でやや沈んだ紅色から鮮やかな紅色に発色します。上質なものは、更に「艶」のある紅色に発色します。これは、筋肉色素(ミオグロビン)が空気中の酸素に触れて起こる酸素化現象です。
よく肥育され、十分な脂肪交雑を伴った牛肉は、発色による良い色が長時間継続されます。時間の経過と共に発色作用は次第に弱まり、ミオグロビンはメトミオグロビンに変化し暗赤色となります。
スライスや切り身を積み重ねた部分が暗赤色になっていることがありますが、これは十分空気に触れないために発色作用が起こらなかったからです。また、時間が経過したため暗赤色に変わったものを、変質または腐敗していると判断するのは誤りですが、風味の点でやや劣ることは否めません。腐敗への肉色の変化は、暗赤色を通り過ぎますと黒みが増し、青みが強くなります。このようになると、やや黄色いネトが発生し異臭を放ちます。この段階のものは、もちろん廃棄処分となります。